相続手続のおおまかな流れを知っているだけでも、相続手続をだいぶ効率的に行うことができます。
万人に共通する決まった流れというものがあるわけではありませんが、期限が決められている手続があります。
また、着手する順番を間違えることで、期限までに判断ができない・書類がそろわないといった問題が生じたり、大きな手戻りになったりするというものもあります。
そこで、ここでは、そのようなものを中心に、多くの人に当てはまるであろうおおまかな流れについて説明します。
なお、実際には、状況等によって同時並行で処理することや、順番が逆になることもあることにご留意願います。
死亡届の提出 ≫ 忘れずにコピーをとっておこう
厳密な意味では相続手続と言えるかどうかはわかりませんが、死亡の事実を知った日から7日以内(国外での死亡のときは3か月以内)に死亡届を提出する必要があります。
死亡届については、葬儀業者が提出してくれることが多いと思いますが、提出する前に必ず何枚かコピーをとっておきましょう。これは、相続手続の中で、死亡届(正確にいうと同じ紙にある死亡診断書(死体検案書))の写しの提出を求められることがあるからです。後日に死亡届・死亡診断書(死体検案書)の写しの交付を受けることは極めて難しいという現実があります。
被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本等を集め、相続人を調査し確定することが必要です。そして、相続人全員の現在の戸籍謄本等を集めます。
死亡届を提出しても、戸籍に死亡の事実が記載されるまでには時間がかかります。死亡の事実が記載された戸籍謄本は、死亡届を提出してから最低でも10日くらい経ってからとると良いでしょう。
なお、戸籍謄本等は郵送でも請求できます。お住いの市区町村以外に戸籍・除籍があるときなどは積極的に活用すると良いでしょう。しかし、時間はかかりますので、余裕をもって請求してください。
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遺言書の探索
適法な遺言書があれば、その遺言書により不動産の相続登記などの相続手続が可能になります。
公正証書遺言は検認が不要ですが、自筆証書遺言については家庭裁判所に遺言書を提出して検認を受ける必要があります。検認までは開封しないようにしましょう。
なお、令和2年7月10日より「法務局における自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度」がスタートしますが、この制度により法務局に保管されている遺言書については検認が不要となります。
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相続財産の調査
民法上の相続財産としては、預貯金・有価証券・金融商品、不動産、自動車や貴金属などの動産といったプラスの財産のほか、借金等のマイナスの財産を含まれます。
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相続放棄・限定承認の判断 ≫ 3か月以内の判断・手続が必要
相続放棄をすると最初から相続人ではなかったことになり、プラス・マイナス全ての相続財産を相続しないことになります。
また、限定承認は、相続財産から債務者への支払いをし、それでも財産が残った場合に、その残った分を相続する制度で、相続人全員で行う必要があります。
相続放棄及び限定承認は、相続人が自己のために相続があったことを知った時(一般的には被相続人の死亡の時となるでしょう。)から3か月以内に家庭裁判所で手続きを行うことが必要です。
この3か月以内に相続放棄または限定承認をしなかったり、相続財産を隠匿したり売却したりしたときなどには、相続財産のプラスもマイナスも両方とも相続する単純相続したものとみなされます。
なお、一度、相続の放棄または承認をすると撤回することはできません。相続財産をしっかり調査して慎重に判断することが必要です。
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準確定申告 ≫ 4か月以内の手続が必要
被相続人が確定申告が必要だったときに必要な手続きです。
被相続人の死亡した年の1月1日から死亡した日までの期間に所得があったときに、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に相続人が行います。
この手続きを専門家に依頼する場合は、税理士に依頼することになります。
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遺産分割協議書の作成 ≫ 相続人全員が揃わないで作成されたものは無効
相続財産について、相続人全員で誰がどの財産を相続するのかを話し合い、その結果を遺産分割協議書にまとめます。不動産の相続登記などの際に使用します。
相続人全員が揃わない中で作成された遺産分割協議書は無効とされているので注意が必要です。無効とされないためには相続人調査が重要です。
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相続税の申告 ≫ 10か月以内の手続が必要
被相続人の遺産総額が遺産に係る基礎控除額≪3000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)≫を超える場合や、配偶者の税額軽減の適用などを受けようとする場合には、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことが必要な手続きです。
相続税が課税される遺産は、民法上の相続財産と異なり、みなし相続財産として死亡退職金や一部の生命保険などが課税の対象になります。
この手続きを専門家に依頼する場合は、税理士に依頼することになります。
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相続預貯金の解約、相続不動産等の名義変更など
預貯金の解約手続や払戻手続、不動産の相続登記、自動車の名義変更などを行います。
これらの手続きは、遺産分割の協議が整えば行うことができます。