逆風の中、支えたい人がいるから、あえて行政書士の道を選ぶ
佐藤浩行政書士事務所のホームページをご覧いただきありがとうございます。当事務所代表の佐藤 浩と申します。
近年、急速に行政手続のIT化、簡素化が進んでいます。
従来は、行政手続と言えば、多くの項目(中には類似した項目もある)を記入して複雑な申請書類を完成させ、様々な部署で入手した多くの証明書類を添付して(場合によっては、複数の異なる)窓口に提出して行うことが必要でした。
それが今では、申請書をWEB上で作成できるものもあって、一度入力すれば類似項目は再度の入力が不要になるなど書類作成が省力化されてきています。
また、インターネットを使って自宅や事務所にいながら申請書類の提出が可能なものが増えてきました。添付書類についても、マイナンバーを活用することで行政機関相互での情報照会が可能になり、住民票の写しなどの添付が不要になりつつあります。
そして、戸籍法の改正案が令和元年5月に可決成立したことで、行政手続における戸籍謄抄本の添付省略への道筋が具体化するなど、行政手続のIT化、簡素化は拡大・深化しており、不可逆的な流れになっています。
この流れは、行政手続コストの削減や市民の利便性向上へ向かうものであり、一見すると、市民にとってはメリット満載の追い風です。一方、官公署に提出する書類の作成を主要業務の一つとしている行政書士にとっては強い向かい風のように見えます。
しかし、このような風向きである今、私は、あえて行政書士の道を選び、平成29年5月に行政書士事務所を開設いたしました。
私は、30年にわたり地方自治体の職員として様々な業務に携わってきました。
その中で、行政手続コストの削減や市民の利便性向上にも取り組み、民間活力の導入や事務事業の見直しなどによる業務の効率化や(職員の)定員管理の適正化などについて、管理部門・現場部門の双方で携わってきました。
行政効率の追求は、市民のために間違いなく必要なことであり、積極的に進めていく必要があることです。
しかし、それには反作用・副作用もあります。
IT化に伴って、フェイストゥフェイスのものを中心として市民と行政職員のコミュニケーション機会が減少してきています。また、効率化による少人数対応の一般化に伴って、知識・ノウハウを蓄積・継承する行政職員の力は衰えがちになっているように思われます。
残念ながら、これらは、ある程度は、避けられないものとして受け入れざるを得ないのかもしれません。そして、そのことで誰かがしわ寄せを受けるのかもしれません。これが30年の行政経験を経て私が抱いた懸念です。
この懸念は、AI技術の進歩などによって、しだいに解消の方向に向かうのかもしれません。とはいえ、少なくとも(結構長い)当分の間は、高齢者や外国人、小規模事業者など、ITや日本語(特に書き言葉)が不得手な方、パソコンなどの事務作業になかなか時間を割くことができない方などにとっては、“行政機関の敷居が高くなる”という具体的な危惧となりつつあるように感じられます。
そのようなことから、行政の効率化のしわ寄せを受けやすいこのような方々が円滑に行政手続を行うことができるように支援していくことで、このような方々と行政機関との懸け橋になりたいと思っています。
私が、地方自治体で戸籍・住民基本台帳関係業務に携わっていたときのことです。市民の方から、時々、ご相談やお叱りを受けることがありました。
そのときに、「亡くなった母が結婚前に本籍を置いていた○○市にある戸籍(除籍)謄本が何故取れないの?」「実の弟の戸籍謄本をとるのに、戸籍を必要とする理由を書いて様々な戸籍(除籍)謄本を何故いちいち出さないといけないの?」などと言う話をお聞きすることが結構ありました。
これらについては、ほとんどの場合は、ご不満は残るにしても、戸籍制度や個人情報保護の必要性などを説明することでご理解いただけましたが、大変だという思いは残ったことと思います。(戸籍法の改正案が令和元年5月に可決成立したことで、本籍地以外の市区町村役場での戸籍全部(個人)事項証明書の発行については、その道筋が見えてきました。)
困ったのが、「銀行は、普段は、相談以外はATMを使えというのに、いざ預金の相続手続を相談すると、本店に問い合わせながらの対応で時間がかかるし、難しくて話がよくわからない。どうすればいいの?役所でわかりやすく説明して。預金をおろせないと葬式費用が出せない」などと言う行政機関以外が絡む話でした。
切羽詰まった話ですが、そのときは、相続手続に必要となる戸籍類や印鑑登録証明書などについて一般論として説明し、再度、銀行に問い合わせるように促すことくらいしかできませんでした。なぜなら、提出が必要な書類の種類や書類の書き方はもとより戸籍類や印鑑登録証明書の有効期間などの相続手続の運用が、銀行によって、場合によっては支店や担当者によって異なっており、不用意な発言によってかえってご迷惑をおかけすることがあるためです。
間違いのない正確で確実な手続が求められる中にあって、銀行も丁寧に対応していたものと思いますが、手続が煩雑で手間がかかることは事実です。また、効率化の反作用・副作用は、なにも行政手続、行政機関だけに限ったものではなく、民間セクターにおいても同様ということなのかもしれません。
相続手続については、私の皮膚感覚では、既に高齢となった子供が親の死亡による相続手続を行うケースや、高齢になってから兄弟姉妹相続が発生して手続きを行うケースなど、高齢者が相続手続を行う件数及び割合が年々増えているように感じていました。
そもそも相続手続は誰にとっても煩雑で手間がかかるものですが、高齢者にとっては尚更だと思います。現に、「故人のためにきっちりしてあげたいと思って頑張っているけど、そんなに相続財産があるわけでもないのに、なんで私が、痛い足を引きずって、見えにくくなった目で書類を書いて、こんなに苦労しなきゃならないの?」と涙ぐまれた高齢の方もいらっしゃいました。その時には、励ますことと、他市への戸籍請求の仕方についてのメモを渡すことくらいしかできず、無力感を感じたことを覚えています。
そのようなことから、相続手続での泣きたくなるほどの苦労から解放するために、戸籍集めから銀行手続などまで、幅広く相続手続についてお手伝いをしていきたい。なかでも手続が身体的にだいぶ堪えるようになった高齢の方々の力になりたいと思っています。
行政機関の架け橋となり、相続手続の支援を行いうるのは、必ずしも行政書士に限ったわけではありません。弁護士や司法書士、税理士などの独占業務とされているものは別として、業としてではなくボランティアとして無償で行うのであれば、基本的には誰でも行うことができます。
しかし、責任をもってこれらのことを行うためには、反復的継続的に行うことが不可欠だと思いますし、そのためには、対価を得ることが必要だと考えます。少なくとも、無報酬でも事務所を維持していけるほどの潤沢な資産を持たない私にとっては、反復的継続的に事業を行っていくためには、適正な対価を得ることは不可欠なことです。
行政書士は、行政書士法(以下、このページでは「法」という。)第1条の2第1項により「他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(略)その他権利義務又は事実証明に関する書類(略)を作成することを業とする」とされています。
そうであるならば、責任をもって業務を遂行するためには、行政書士として取り組むことが必要不可欠なことだと考えます。
そして、行政書士には、法第11条において「依頼に応ずる義務」が、法第12条において「秘密を守る義務」が課されており、それぞれ法第23条第1項及び法第22条第1項において違反した場合の罰則も規定されています。
もちろん、法律に規定されていようがいまいが、きっちり仕事をして、秘密もしっかり守るということは当然のこととして実行してまいりますが、このように法律によって罰則付きで守秘義務等が課されていることが、責任ある業務遂行についての口だけではない、しっかりした担保となっています。
行政機関との懸け橋や相続手続の支援は、行政書士だけで実現できるものではありません。例えば、登記手続は司法書士、税申告は税理士、争い事であれば弁護士の独占業務です。行政書士は行うことはできません。したがって、これら他士業の方などとのネットワークで総合的に支援していくことが必要です。
そうであるならば、行政書士でなくても他の士業でもよいのではないかと疑問がわくと思いますが、その疑問は的外れというわけではありません。例えば、必要な手続のほとんどが登記手続ということであれば、最初から司法書士に依頼した方が良いでしょう。その司法書士が税理士と連携していれば、関連して税申告が必要な場合は連携している税理士の支援を受けることができるかもしれません。
しかし、司法書士や税理士、社会保険労務士などは限られた分野の手続きしか対応できません。それに比べて、行政書士の場合は、他士業の独占業務などを除いて、数多い我が国における許認可のほとんどの手続きが可能であり、その広範な守備範囲は支援ネットワークの要になるにふさわしいと思います。
さらに、相続手続に関しては、一般的には、相続人を調査し、確定することが最初に行うべき入口の業務となりますが、この業務は、相続関係説明図の作成として行政書士が主として担うものとなります。(相続登記手続きの一環として司法書士が行うなど、行政書士以外の者も行うことが可能な場合はありますが、その対応できる範囲は限定されます。一方、行政書士は、登記手続を伴わないときなども含め広く様々な場合において行うことができます。)
遺産分割協議書の作成といった相続において大きなウェイトを占める手続についても、行政書士は、争いがなければ広く様々な場合に行うことができます。
このように、相続手続においても、入口業務や主要な手続を担う行政書士は、支援ネットワークの要として他士業等とのつなぎ役や調整役を担うに最適であり、そうすることが合理的で効果的なことだと考えます。
私は、このような行政書士の特徴を最大限に活かして、関連士業等の方々としっかり連携し、力を合わせて、皆様のために尽くしたいと思っています。