相続手続きにおいては、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得する必要がありますが、被相続人が高齢で、しかも兄弟姉妹相続のときなどは、かなり古い戸籍を取り扱うことになります。
ところで、除籍・改製原戸籍の保存年限は150年ですが、これは平成22年法務省令22により延長されたもので、それ以前は保存年限80年でした。保存年限の延長が決定した時には既に廃棄されていた明治19年式戸籍や明治31年式戸籍は少なくありません。また、大都市などを中心にして戦災などで戸籍が滅失している場合もあります。
これら廃棄され、滅失した戸籍があることで、古い戸籍を取り扱う相続人調査においては、他に相続人がいないことの証明ができない場合があります。
このような場合には、これまでは相続登記の際に、相続人全員が署名押印した「他に相続人がいないことの証明書」を作成する必要がありましたが、次に示す平成28年3月11日付 法務省民二第219号法務省民事局長通達が出されたことで、現在は、「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市区町村長の証明書を提供すればよいことになっています。
除籍等が滅失等している場合の相続登記(通達) 平成28年3月11日付 法務省民二第219号
相続による所有権の移転の登記(以下「相続登記」という。)の申請において、相続を証する市町村長が職務上作成した情報(不動産経記令(平成16年政令第379号)別表の22の項添付情報欄)である除籍又は改製原戸籍(以下「除籍等」という。)の一部が滅失していることにより、その謄本を提供することができないときは、戸籍及び残存する除籍等の謄本に加え、除籍等(明治5年式戸籍(壬申戸籍)を除く。)の滅失等により「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書が提供されていれば、相続登記をして差し支えない。
なお、この「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市区町村長の証明書は、一般的には有料(300円とする市区町村が多い)で交付されるものであり、交付を希望する旨を示さない限り交付されません。
そこで、古い除籍や改製原戸籍を請求する際には、状況に応じて、交付請求書に必要な戸籍の範囲を記載するのに併せて、例えば“廃棄・滅失等により交付できない場合は「除籍等の謄本を交付することができない」旨の証明書の交付をお願いします。”と記載しておくと効率的に取得することができると思います。